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Runner’s Story

Runner 06

赤松 隆滋さん

46歳

走行都道府県
京都府

障害への理解を深めて、
子どもたちの髪をカットする。
そんな活動があることを
知ってほしかった。

この取材の依頼があってうれしかったです。というのも、僕がオリンピック聖火ランナーに応募したのは、発達障害があって髪を切るのがむずかしいお子さんに、ヘアカットする活動があるっていうことを広めたかったからなんです。たとえば、そういう場合のカットの仕方っていうのはネットにも書籍にもなくって、今でもたぶん、検索したら僕の記事が出てくるとかそのぐらいじゃないかな。

もともとは僕は、発達障害にそんな詳しかったわけじゃないんですけど、昔、先生になりたかったこともあって。子どもたちと交流したいって気持ちで、前髪カット講座っていうのを児童館でやってたんですね。その時にきてくれたお母さんが、実はうちの子、発達障害でお店に連れていけなくて、今は家で切ってるんだけど、いつまでも私がやってあげられない不安がある。そういう悩みを打ちあけてくれました。じゃあ家に行きましょうか?って言ったけど、そうじゃないと。自分がいつかそばにいれなくなったときに、外でできることを増やしたいって聞かせてもらって。なるほどなあと。

最初の失敗で、後悔で眠れなかった。
そこから、勉強をスタートした。

実は最初の子で、大失敗したんです。聴覚が過敏とは聞いてたんですけど、じっと座ってくれているから、すぐ終わって。お母さんが1週間かけてちょっとずつ切っていたのが、5分で切れたんで、もう余裕やなと。でもせっかくだから完ぺきに仕上げたいって職人の変な根性出て、バリカンのスイッチ入れちゃったんです。でも実はその子は極度の緊張状態で。今から思ったらひどいですけどね、聴覚が過敏で、いつもよりさらに緊張してて、その子にとったらもう爆発音ぐらいに聞こえたかもしれないですね。うわーって泣きながら走り回って。その夜は、寝れなかったんですね。子どもが好きで、先生なりたいって言ってたのに、パニックにさせてしまった。全然眠れなくて、発達障害ってネットで調べたのが、活動のきっかけなんです。

専門書はなかったから。
それぞれの子どもの気持ちを想像して、
手探りで工夫していきました。

一口に発達障害って言っても、みんな十人十色なんですよ。聴覚に過敏だったり、触覚に過敏だったり、多動で座ってるのが苦手だったり、その都度その都度、その子にどういう切り方が合うんかなっていうのを模索し始めたのが、10年前です。もちろんそういうヘアカットの専門書はないんで、本当に手探りでした。発達障害の本をずーっと読んで、「あ、これはあの子みたいな感じかな」とか、いろんな特性を知って、気持ちを想像して。たとえば、視覚支援の仕方が載っていたんで、それの散髪バージョンつくってみたり。イラストカードを使って「今からこうするよ」と順番を説明するだけでも落ち着く子がいるんです。見通しがつくと人って安心しますよね。

ひとり、多動の子がいたんです。じっとしてないので、僕もお母さんも毛だらけ笑。そんなある日、「次の予約は5月の何日にしましょう」みたいに言ったら、その子がボソッと「月曜日」って言ったんですね。するとお母さんが「この子、カレンダー全部覚えてて。すごい数字にこだわるねん」って教えてくれて。それで、ふと思って「じゃ、時計の長い針が2のとこまで座っててよ。それ以上切らないから」って言ったら、パッと「10分」と答えて、そこからじっと座っててくれたんです。その時わかったのは、その子は暴れてせわしない子とかじゃなくて、終わる時間を知らされてなかっただけなんですよ。約束した時間をちゃんと守る子なんですね。それを知らずに、大変な子だって思い込んでいた。そんな風に、レッテル貼ってることっていっぱいあるんじゃないかな。

「困った子」なんていないです。
「困っている子」なんです。

発達障害といっても、見た目は元気な子が多いんです。だからこそ組織になじめずに、引きこもりや鬱になってしまう子も多い。でもそれは子どもたちが困った子じゃないんですよね。困っている子なんですね。そして、困っている子がいたら手を差し伸べるのが大人じゃないですか。だから、美容師だけじゃなくて、あらゆる分野のプロに、子ども達に手を差し伸べようって伝えたいです。そしたらもっと優しい世の中になるよね。

無理やり押さえつけて切ったりはしないっていうのがこの活動で、スマイルカットって名前を僕がつけたんですけど。保護者さんも、子どもも、美容師も、みんな笑顔でカットするっていうのを目標にしています。たとえば、子どもが来たときに、目を見てニコッと笑って「こんにちは、僕を赤松さんって呼んで」ってハイタッチするだけで、髪を切らしてくれる子もいっぱいいるんですよね。要は、子どもの目線になって楽しい雰囲気つくる。そういう僕も、昔はめっちゃ子どもに泣かれてたんです。なんでか言うたら、お母さんの顔見て、真顔で「今日この子、どうします?」ってやってたんですね。でも今は、障害とか関係なく、子どもに泣かれなくなった。そういうこと、美容師さんに知ってもらうだけで全然違うじゃないですか。選択肢や、引き出しができる。

誰かのためにやってるつもりが、
結局自分がギフトをもらっていた。

今僕のお店には、ネットとか見て他の県からわざわざ来てくれる人、多いんですよ。最初はうれしかったんです。でも、考えたら、何軒美容室を通り越えてこっち来たっていう。ほんとは家の近くで切れるようになるといいなあって。僕らの子どものときって、車いす、段差があって通れなかったら「しょうがないよ」っていう時代やったと思うんですね。でも、バリアフリーっていう言葉ができて、「この建物、優しくないね」って言われるようになった。美容業界でも近いうちに同じことが起こるんじゃないかなって。だからNPOでスマイルカット実施店っていうのを全国から募りました。ようやく50店舗を超えたところです。美容室は35万店舗ぐらいあるから、いつかは各市町村に1店舗ぐらい、やりますよって美容師さんがいてくれたらなあって思います。今はSNSを通して全国に仲間ができて、講演会とかいろいろ協力してくれるので、心強いです。

自分が誰かのために何かやってるつもりでも、結局、僕がたくさんのギフトを子どもからもらってるんですよね。いっぱい気づきや、つながりをもらった。だから、今までは「頑張ったね」って言葉をかけてたのが、最近は「ありがとう」って付けるようになっていて。そんなんもふまえて、聖火リレーでは、今まで関わってきた人たち、子どもたちにありがとうって思って走りたい。僕はなんというか子ども達に、髪を切る手前の大事なとこ、そして、切った後の大事なとこも教えてもらった。ほんとにそう思います。

※記事は取材当時の内容になります。

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